腰痛の病態説明– WAIST –

筋筋膜性腰痛とは

  • 筋筋膜性腰痛とは、腰背部の筋肉や筋膜に過度の負荷がかかったことが原因による腰痛をいう。
  • 筋筋膜性腰痛は、腰痛の原因としては最も多いと考えられる。
  • 筋筋膜性腰痛は、不良姿勢や不適切な動作、許容を超えた負荷が発症に影響する。
  • 筋筋膜性腰痛は、強い筋肉運動やスポーツその反復が発症に影響する。
  • 筋筋膜性腰痛は、腰の筋肉痛、捻挫、肉離れ、スジ違えと呼ばれることもある。
  • 筋筋膜性腰痛は、筋肉や筋膜に存在する痛みを感じる侵害受容器が察知したものである。
  • 筋筋膜性腰痛は、腰背部の筋肉の圧痛、腰部の運動痛が主要な診断ポイントである。
  • 筋筋膜性腰痛は、ぎっくり腰の病態として椎間関節性腰痛に次いで発症が多い。
  • 筋筋膜性腰痛は、椎間関節性腰痛、腰椎椎間板性腰痛、仙腸関節性腰痛にも合併する。
  • 筋筋膜性腰痛は、腰部の筋肉の疲労から血液循環が低下して筋肉に凝りや痛みを生じている。
  • 筋筋膜性腰痛では、疼痛部位や圧痛が椎間関節性腰痛の箇所よりやや上方に出現する。
  • 筋筋膜性腰痛では、疼痛部位が急性期には限局しているが慢性化すると拡大することがある。
  • 筋筋膜性腰痛では、画像検査や神経学的検査で特徴的な所見は見当たらない。
  • 筋筋膜性腰痛では、運動時の痛みが強く安静時の痛みは少ない。
  • 筋筋膜性腰痛では、椎間関節性腰痛に比べて圧痛が著明である。
  • 筋筋膜性腰痛では、治療の要点は薬物や筋トレではなく筋肉をほぐすことが重要である。
  • 筋筋膜性腰痛では、背部や腰部殿部にできたトリガーポイントが腰痛の発症原因となる
  • 筋筋膜性腰痛では、胸最長筋、腰腸肋筋、多裂筋、腸腰筋、腰方形筋、中殿筋、腹直筋などに筋緊張や痛み、圧痛、硬結、トリガーポイント(TP)がみられる。
  • 筋筋膜性腰痛には、腰背部のトリガーポイントを鍼灸、マッサージ、注射で解す+ストレッチを
  • 筋筋膜性腰痛には、患者、医師、施術者全てがトリガーポイントの知識共有が要諦である。
  • 筋筋膜性腰痛の治療法は、トリガーポイント治療、ホームエクササイズ指導。

腰椎椎間板ヘルニアとは

  • 腰椎椎間板性腰痛とは、腰椎椎間板の歪みまたは髄核の偏位が原因による腰痛をいう。
  • 腰椎椎間板ヘルニアが坐骨神経痛の原因であると、1934年にMixterとBarrと報告した。
  • 腰椎椎間板は、中心にはゼラチン状の髄核と周囲はコラーゲンを含んだ線維輪で構成されている。
  • 腰椎椎間板の中心部の髄核が周囲の線維輪を突き破り脱出した状態を腰椎椎間板ヘルニアという。
  • 腰椎椎間板に枝をだす末梢神経は、洞椎骨神経、灰白交通枝、交感神経幹である。
  • 腰椎椎間板の線維輪最外層には侵害受容線維が存在し、腰椎椎間板性腰痛の原因となる。
  • 腰椎椎間板は、腰椎椎間関節と共に背骨の動きを調整する重要な部分である。
  • 腰椎椎間板の画像診断で、ヘルニアが見つかってもそこが疼痛源とは言い切れない。
  • 腰椎椎間板の変性やヘルニアには無症候(症状が出ていない)の場合が少なくない。
  • 腰椎椎間板性腰痛では、腰椎の屈曲即ち前屈みで痛みが増強し、伸展で軽快する。
  • 腰椎椎間板性腰痛で、急に負荷がかかり線維輪に僅かな亀裂が入った痛みをギックリ腰と呼ばれる。
  • 腰椎椎間板性腰痛は、男女差なく20代以降に発症し、40代以降に最も多い。
  • 腰椎椎間板ヘルニアの好発年令は20~40才代である。高齢者には少ない。
  • 腰椎椎間板ヘルニアの好発部位は第4~5腰椎間、第5腰椎~第1仙椎間に多発する。
  • 腰椎椎間板ヘルニアは、神経根を圧迫する病気で腰痛よりも下肢に痛みや痺れを来すことが多い。
  • 腰椎椎間板ヘルニアが自然に退縮または完全に消失するものがある。
  • 腰椎椎間板ヘルニアの診断は、画像所見、問診、理学所見、神経学的所見などを併せて判断する。
  • 腰椎椎間板ヘルニアは、椎間関節性腰痛や仙腸関節性腰痛との鑑別に注意する。
  • 腰椎椎間板ヘルニアは、椎間関節性腰痛や仙腸関節性腰痛と合併しての発症もある。
  • 腰椎椎間板ヘルニアは、筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の発症に関与する。
  • 腰椎椎間板性腰痛の治療法は、トリガーポイント治療、椎間板のリセット、マッケンジー法、ホームエクササイズ指導。

椎間関節性腰痛とは

  • 椎間関節性腰痛とは、腰椎椎間関節がロックまたは関節の微少偏位が原因による腰痛をいう。
  • 椎間関節由来の腰痛に関する歴史は古く、1911年にGoldthwaitの報告が最初である。
  • 椎間関節は、脊椎の後方に位置する左右一対の小さな関節で上下の二つの腰椎をつないでいる。
  • 椎間関節は、上下の関節突起、関節包、滑膜からなり関節腔内に1~1,5mlの関節腋を含んでいる。
  • 椎間関節は、脊髄神経後枝内側枝により支配され上下の椎間関節と多裂筋という筋肉に分布する。
  • 椎間関節は、知覚神経終末が豊富に存在し、腰痛の発生原因となる。
  • 椎間関節は、椎間板と共に背骨の動きを調整する重要な部分である。
  • 椎間関節の画像診断で、変形性変化があるからといってそこが疼痛源とは言い切れない。
  • 椎間関節の画像診断で、変形性変化がないからといって、椎間関節性腰痛を否定できない。
  • 椎間関節性腰痛では、椎間関節の圧痛、腰部の運動痛特に伸展痛が診断ポイント。
  • 椎間関節性腰痛で、椎間関節に急に負荷がかかり関節を傷めた時は俗にギックリ腰と呼ばれる。
  • 椎間関節性腰痛は、重いものを持ち上げたり運搬の際又はこれらの継続作業者に発症し易い。
  • 椎間関節性腰痛は、反り腰等の不良姿勢の継続によっても椎間関節に負担がかかり発症する。
  • 椎間関節性腰痛は、第五腰椎と仙骨間での発生が最も多い。
  • 椎間関節性腰痛は、椎間板や椎間関節の変性(老化)が主原因の場合もある。
  • 椎間関節性腰痛は、非特異的腰痛の代表的疾患であるがレントゲンやMRI等の画像所見は乏しい。
  • 椎間関節性腰痛では、下肢伸展挙上すると下肢が90度近くに上がった時に腰痛が起こる。
  • 椎間関節性腰痛では、長時間のうつ伏せ或いは仰向けでいると痛みが増強することもある。
  • 椎間関節性腰痛では、多くの場合下腰部や殿部の疼痛で時に大腿部に関連痛を起こす。
  • 椎間関節性腰痛は、筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の発症に関与する。
  • 椎間関節性腰痛の治療法は、トリガーポイント治療、椎間関節のリセット、ホームエクササイズ指導。

仙腸関節性腰痛とは

  • 仙腸関節性腰痛とは、仙腸関節がロックまたは弛緩されたことが原因による腰痛をいう。
  • 仙腸関節は、左右の腸骨と仙骨をつなぎ関節包で包まれた滑膜関節である、仙腸関節の関節包は、外層の線維層と内層の滑液層の二層から成る。
  • 仙腸関節の関節包には、侵害受容器が存在し、疼痛の発生源となる。
  • 仙腸関節は、上体の重みを支え歩行走行時には下肢からの突き上げの負荷がかかる。
  • 仙腸関節は、腸骨の開閉に数ミリ、仙骨の傾きに2~3度の可動性をもっている。
  • 仙腸関節が、ロックまたは弛緩された状態を仙腸関節の関節機能異常という。
  • 仙腸関節の関節機能異常は、仙腸関節性腰痛の大きな原因となる。
  • 仙腸関節性腰痛は、女性に多い。特に出産後の女性に発生しやすい。
  • 仙腸関節性腰痛は、片脚に強く荷重負荷をかけるような作業や運動での発生頻度が高い。
  • 仙腸関節性腰痛は、下位腰椎の固定手術を受けた者に発症することがある。(10数%) 
  • 仙腸関節性腰痛は、画像検査によってその障害を認めることは困難である。
  • 仙腸関節性腰痛は、一部の整形外科医以外整形外科医で診断されることが少ない。
  • 仙腸関節性腰痛は、整形外科医の殆どが腰痛の診断と治療の概念にない。
  • 仙腸関節性腰痛は、上後腸骨棘付近(上殿部内方)に特徴的な疼痛領域をもっている。
  • 仙腸関節性腰痛は、前屈で痛いタイプ、伸展で痛いタイプ、両方で痛いタイプがある。
  • 仙腸関節性腰痛は、椎間板性腰痛や椎間関節性腰痛との鑑別に注意する。
  • 仙腸関節性腰痛は、椎間板性腰痛や椎間関節性腰痛と合併しての発症もある。
  • 仙腸関節性腰痛では、Newton、Gaenslen、Patrickの各テストで一つ以上が陽性。
  • 仙腸関節性腰痛では、自覚疼痛領域、圧痛点、疼痛誘発テストを重要視する。
  • 仙腸関節の関節機能異常は、筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の発症に関与する。
  • 仙腸関節性腰痛の治療法は、トリガーポイント治療、仙腸関節のリセット、ホームエクササイズ指導。